音左右衛門のソラミミ

良き音に、ずっと浸っていたい

オンラインレッスンの機材

オンラインを利用したリモートワークはご存知のようにここ1年の間に急速に普及しました。すでに普段の仕事などで使っている方も多いと思います。

一方ミュージシャンにとっても大げさでなくこの1年は「オンラインとのたたかい」でもありました。多少機材やパソコンなどでの配信の知識があっても、画面越しに音楽をどう伝えるかは思った以上にハードルが高く、エネルギーを使います。実際にライブ配信もオンラインレッスンも、「家にいながら音楽活動」はラクなようで、終わった後の疲労感はむしろオンラインの方が大きいこともあります。

 

オンラインでの音楽のやりとりは「つながらない」「音が出ない」「音質がちょっと」…1つのトラブルでも大きなストレスになります。なので少しでもストレスを取り除くためには、プラスの要素…特に「楽しさ」を見つける、多少のトラブルも楽しめるくらいのメンタルも持ちたいところですが、ある程度良い機材を持っておくことで、安心感をより保ちやすくなります。

 

前回は「配信」についての機材を考えてきましたが、今回は「オンラインレッスン」にしぼってみたいと思います。配信よりもずっと少ない予算で揃えることができます。オンラインレッスンは1対1もしくはグループで

 

講師
カメラつきパソコン wi-fiまたは有線LAN
受講生
カメラつきパソコンまたはスマホタブレット wi-fiまたは4G以上の回線

 

という環境で行われている場合が多いと思います。実はこれだけでレッスンは可能です。中には現在も「お互いのスマホだけ」でオンラインレッスン環境を構築している講師の方もいらっしゃるでしょう。

 

ただ自粛ムードが薄れてくればオンラインレッスンは途端に「いまさら感」が強くなり下火になりがちです。例えば生徒さんに案内した際に「いや~オンラインは苦手ですよ」「レッスンできるようになったら教えてください」と最初に言われてしまうとしたら、そこからの道のりはかなり大変です。


でもオンラインレッスンは決して「非常時のつなぎ」ではありません。いざリアルレッスンができたときにスムーズに入りやすいのはもちろんですが、「平常時」であってもオンラインでできます。「設定が面倒くさい」という意識をいったん置いておいて、機材1つ足してみて「あっ音が良い!」という体験ができれば案外苦手意識がなくなり、リアルレッスンとオンラインレッスンをうまく両立できる可能性もあります。いつも動画サイトで観ているミュージシャンと直接つながることもできるかもしれません。   

 

一方、講師側も「誰かに自分の技術や知識を伝えられる」というのは、この不安定な状況でこそ、大きなモチベーションを与えてくれます。良い環境で接続&継続するために、なるべく良い状態にしておきたいところ。カメラつきパソコン、wi-fiまたは有線LANを基本として、少ない手間でセッティングするならこの機材がいいのではないか、というものを紹介します。もちろん、受講される方もこうした機材を持っているとレッスンをより良い環境で受けられるだけでなく、演奏を良い音で録音できますし、普段聴いている音楽の音質向上も期待できます。

 

これまでの記事で書いた「マイク」や「オーディオインターフェイス」も含めて、「オンラインレッスン向き」と思われる機材をピックアップしています。一部の機材は、筆者のホームページでも「推奨機材」として掲載しているものです。

 

なお、通常の通話も含めてミーティングアプリでつないだ場合はかならず「遅延」が発生します。「せーの」で手を叩いたり歌ったりしても「双方でタイミングが合う」ことはありません。

 

でも逆手にとれば、この「遅延」こそがオンラインレッスン向きだともいえます。講師が最初に見本をやって「これやってみて」と受講生がその場でトライしてみる、という伝統的な稽古の手法でレッスンできるからです。最近はYAMAHAの「SYNCROOM」のように時差なしでリモート共演ができるシステムもありますが、あくまで「お互いの音が良く聞こえる」が第一条件となります。

 

 
1.USBマイクとヘッドホンで構築する場合
音楽再生 〇 ※ヘッドホンが必要
ビデオ通話 〇
オンラインレッスン ◎
スマホタブレット使用 △ ※一部機種のみ対応
演奏の録音 〇
演奏の配信 〇 ※ループバック機能があるのはRevelatorのみ
リモート同時演奏 △

proaudiosales.hibino.co.jp

 

www.mi7.co.jp

USBマイクなら、前回の記事でも紹介した「AKG LYRA」か「Revelator」がいいと思います。ループバック機能(後述)が必要ないなら「LYRA」はiPadなどにも接続できるのでおすすめです。ただしLightning端子の場合は別途USB3カメラアダプタで電源供給が必要です。

Revelatorは現段階ではパソコンでのみ使用可能ですが、ASIOドライバに対応しており、ループバック機能(例えばPCでカラオケ音源を流してそれに合わせて配信をする機能)もあります。SYNCROOMでの接続にも向いています。

 

(開放型ヘッドホン)

proaudiosales.hibino.co.jp

 

(密閉型ヘッドホン)

www.audio-technica.co.jp

 

なおUSBマイクを使用する際にはヘッドホンが必要になります。ヘッドホンには「開放型」と「密閉型」があり、開放型は背面にメッシュ状の穴が開いていて音が外にも漏れます。その分高音域も自然な感じで抜けて耳への負担が少ないタイプです。一方密閉型は遮音性に特化しているので低音域をしっかり感じられます。環境やお好みに合わせて選んでみてください。

 

2.オーディオインターフェイスコンデンサーマイクで構築する場合
音楽再生 ◎ ※ヘッドホンまたはスピーカーが必要
ビデオ通話 〇
オンラインレッスン ◎
スマホタブレット使用 〇 ※一部機種は非対応
演奏の録音 ◎
演奏の配信 ◎
リモート同時演奏 〇

www.steinberg.net

 

kcmusic.jp

 

これから揃える場合は最小限の投資でシステムを構築できるセット(パック)が便利です。ただこれらのお得なセットは入手困難な状況が今も続いており(新しいセットのリリースもないので)、その場合は「オーディオインターフェイス」「マイク」「ヘッドホン」「マイクスタンド」「(必要に応じて)スピーカー」を別々に購入する必要があります。

 

特に「オーディオインターフェイス」についてはこの1~2年でどんどん新製品が投入されているので、詳しくはこのブログで以前書いた記事「オーディオインターフェイスは消耗品なのか」「コンデンサーマイク最初の1本」もご参照ください。場所はとりますが、ここまで揃えるとパソコンのオーディオ環境も飛躍的に良くなります。USBマイクのように接続すればOKという手軽さはなく、セッティングもやや複雑になりますが、一旦設定できてしまえばきっとスマホでのレッスンには戻れなくなります。

 

それぞれの○×評価は用途ごとに「向いている」「向いていない」「利便性」で分けているので、必ずしも品質を表したものではありません

 

参考記事

otozaemon.hatenablog.com

otozaemon.hatenablog.com

 

3(番外編)スピーカーフォンで構築
音楽再生 〇
ビデオ通話 ◎ ※音声のみの評価
オンラインレッスン △ ※楽器により向き不向きがあるかも…
スマホタブレット使用 〇 ※一部Bluetooth非対応機種あり
演奏の録音 △
演奏の配信 ×
リモート同時演奏 ×

 

www.audio-technica.co.jp

 

www.poly.com

 

ちょっと番外編ですが、最近はオンラインミーティング用にいろいろなメーカーから「スピーカーフォン」というものが発売されています。「スピーカー」と「マイク」が一体となっていて、USBなどでパソコンにつなぎ、全方位から音を拾うので会議室でも使用できる、というものです。

 

もし全員が同じ部屋でZoomなどのミーティングアプリに接続してパソコンのスピーカーやマイクがonになっていたりするとハウリングが発生して大変なことになるので、声の出入りを1つにまとめられる、という点で安全かつ高音質で発信できます。なによりヘッドホン(ヘッドセット)がいらないので髪型を気にしたり不意の大音量でびっくりすることもありません。

 

スピーカーフォンは楽器演奏用の機材ではない(少なくとも広告のイメージ写真には1枚も登場していない)ので、実はこれまであまり意識していなかったのですが、ヘッドホンを使わずにできるというのはけっこうポイントとして大きいのではないかと考えるようになりました。声でのやりとりがメインのレッスンなどにはかなり効果的でしょう。私も打ち合わせ用に一台欲しいところです。もし使ってみてよかったら追記したいと思います。持ってもいないのに○×評価をしてしまいすみません、現段階ではあくまで機材の特性からの推測(ソラミミ)です。

 

音響メーカーではYAMAHAが以前からスピーカーフォンを出していて、2021年6月にオーディオテクニカがお求めやすい価格のモデルをリリースしてきました。スピーカーフォンは全体的に8人までとか、複数でテーブルを囲んだ会議を想定した製品が多いですが、このところ1人のデスクワークでも使えそうなサイズ感の製品も増えてきています。ヘッドセットで有名なPlantronics改めPolyやJabraなども積極的にリモートワーク向けの機材をリリースしています。

Bluetoothスマホタブレットにも接続できるので、普段からスマホで音楽を聴いたり、動画を視聴することも可能です。

 

パソコンのWebカメラについて

 

デスクトップパソコンしかない場合やノートパソコンの内臓カメラの画質がちょっと…という場合はWebカメラの使用をおすすめします。

・専用のWebカメラ
デジタルカメラWebカメラ機能
・カメラのHDMI出力をキャプチャー

の3つの方法があります。デジタルカメラのWebカメラ機能は2020年にWebカメラが品薄状態になった際に各メーカーが対応しました。幸運なことに筆者愛用のカメラも対応していたので本当に助かりました。

一方HDMIキャプチャーはカメラの映像をパソコン上で映せるもので、さまざまなタイプもあります。専用のWebカメラより高い場合もありますが、買ってしまえば配信機材との共用も可能です。

ただし「Webカメラ機能」は最近の一部機種に限られている場合が多く、「HDMIキャプチャー」はセッティングにもやや時間がかかります。何より電源を長時間つけっぱなしにする必要があります。もし新しく手に入れられるなら専用のWebカメラ導入を検討してみてください。

 

ネットで検索すると各メーカーから2,000円~3,000円台のカメラが大量に出てきますが、ちゃんとした映りを求めるなら、ちょっと高値になりますが

Creative Creative Live! camera  (v2が出たので初期型がお買い得)
Logicool  C922n / C980(周辺機器メーカーの中ではやや高級)
※C980はUSB-typeC接続
Razer Kiyo pro(ゲーマー向け)
Poly P5 (Plantronics改め)

あたりがいいと思います。もし自分が今後導入するとしたらPolyのカメラを検討しています。

jp.creative.com

 

www.poly.com