音左右衛門のソラミミ

良き音に、ずっと浸っていたい

オーディオインターフェイスは「消耗品」なのか

オーディオインターフェイスというのは、「パソコンにつないで、音の出入りを管理・調整する機材」です。パソコンでレコーディングするには必須の機材、配信に関してもかなりの部分で必要になります。

 

ライブでもパソコンの音でカラオケ音源を流して生演奏と合わせる「同期演奏」に用いられます。ライブ映像で、「バンドメンバー4~5人で演奏しているけど、CDに入っているストリングス(バイオリンなど)が聴こえる」場合はほぼ「オーディオインターフェイス」が使われているといっていいでしょう。

 

オーディオインターフェイスのここ数年のリリースのスピードはかなり早いです。なぜなら、マイクとの接続については、「マイクプリアンプ(増幅する装置)」のアップデート程度でそれほど大きな変化がありませんが、パソコンとの接続については、パソコンの環境の変化に合わせ続けなければならないからです。

 

ちなみに私が2005年ごろに初めて買ったオーディオインターフェイスEDIROLRoland)の「UA-25」という機種でした。エントリークラスでしたが当時単体で25,000円くらい、この時は音楽制作ソフト「SONAR5」とのセットで買ったので60,000円くらいだったと思います。

 

この機材、パソコンとの接続はなんと「USB1.1」、同じ時期に出ていたFirewireIEEE1394互換?)接続の「UA-66」やUSB2.0接続の「UA-101」もありましたが、2020年現在、Windows10で動くのは「UA-101」のみ、MacではmacOS 10.10以降はサポート対象外という状況になってしまいました。

 

また「UA-66」が接続できるようなFirewire (Mac)、IEEE1394Windows)の端子がついているWindowsPCやMacは今は売られていませんし、Firewire対応のインターフェイスについてはRMEFirefaceシリーズの一部機種が最後の砦になっています。昔はおそらく業界標準だった、デスクトップのパソコンPCIポートに直接挿す「サウンドカード型」はすでにレガシーとなっています(これもRME等が販売中)。

 

ちょっと調べたところ、「世界初のUSBオーディオインターフェイス」といわれたRolandの「UA-100」が出たのが1998年、「世界初のUSB2.0」が2003年の「UA-1000」だそうなので、そもそも歴史は新しいはずです。それがたった10数年で「Thunderbolt3」や同じ形状の「USB-Type C」が主流になって、USB3.0すら「変換ケーブル」で接続する時代になってしまうとは…。

 

パソコンで音楽制作をしようとする場合、オンラインゲームをするほどのスペックは必要ありませんが、それでも10~20万はかかります。これからはもっと動画編集ができるようなスペックも求められるでしょう。ただ「速い、快適な」パソコンも2年もすれば「遅い、重い」状態になり、5年後には使えるソフトや周辺機器がその時点での最新OSには対応できず場合によっては総入れ替え、なんてことも…。

 

コンピューターの市場は「史上もっともパワフルな」新製品を買わせるために、ハードウェアもソフトウェアも旧製品は容赦なく切り捨てていく世界です。「オーディオインターフェイス」はいつもその修羅の世界の入り口に立っています(大げさ)。もちろんOSを更新しなければ、パソコンが動作する限り「延命」は可能ですが、セキュリティーなど維持は大変です。長年使ってきたパソコンをネットにはつながず「音楽制作専用」にしている方もいるようです…。

 

音左右衛門的 オーディオインターフェイスの選び方

さて、とても長い前置きでしたが…オーディオインターフェイスをこれから買うとしたら、ある程度WindowsMacの動向を見極める必要があります。

 

接続方法については、USB2.0はまだしばらくは使えると思うのですが、「Thunderbolt 3」や「USB-Type C」は今後、同じ形状で互換性の高い「Thunderbolt 4」や「USB4」に統一されていくようです。つまり、Macなら「Thunderbolt 3~4」、Windowsなら「USB Type-C」または「USB2.0~3.2 Type-A」接続の機材が、2020年時点で「わりと長持ちする機材」になるといえます。Windowsでも、高いノートPCはThunderbolt端子を装備したものがあります。

 

そして「OS」の問題もあります。オーディオインターフェイスの新機種をどんどん出して最新のOSに適合させるメーカーも魅力的ですが、その分古い機材が早くサポート終了になりOSのアップデートについていけない可能性もあります。音の良さが一番ですが、ドライバの信頼性も大事です。ただし、古くなった時にパソコンにつながなくても「マイクプリアンプ」として動作する機材なら、別の意味での「資産価値」もあると思います。

 

まずは、自分が最初のオーディオインターフェイスとして選ぶとしたら、というイメージで選びました。他の方の「○○年最新版」の紹介記事とはかなり異なるラインナップかもしれません。(2021.6.5更新)

 

TASCAM(タスカム) / US-2×2HR(USB Tyoe-C 接続 USB2.0互換)iOS対応


STEINBERG ( スタインバーグ ) / UR22C (USB Tyoe-C 接続 USB3.0互換)iOS対応


PRESONUS ( プレソナス ) / Studio 26c (USB Tyoe-C 接続 USB2.0互換)iOS対応

 

SOLID STATE LOGIC ( ソリッドステートロジック ) / SSL2+ (USB Tyoe-C 接続 USB2.0互換)

 

もし初めてオーディオインターフェイスを買うなら2020年時点では「コスパ」重視の機種としては上記5つが良いんじゃないかな…と思いました。USB-TypeC 接続に対応、従来の形状である「Type-A」接続のケーブルが両方付属しています。それぞれ音楽制作ソフトのライトバージョンも付属していて、「どのソフトで音楽制作を始めるか」というのも判断基準になると思います。パソコンの動作環境にもよりますが、モニターしたり音を重ねて録音したりする際にレイテンシー(音の遅延)が発生しにくく、ドライバもOSに合わせてアップデートし続けています。

 

ちなみにSSL以外の4機種はiPadなどiOSの端末に接続可能で (Lightning端子の場合はApple純正のUSB3カメラアダプタを使います)、マイク入力は2つ~シリーズによってはマイク4入力、8入力のバリエーションもあります。

さらに「TASCAM」「Steinberg」「PreSonus」は最近のほとんどの機種に「ループバック機能」がついています。例えばパソコンで鳴らした音源に合わせて歌う場合に音ずれがなく、ライブ配信をする際に便利な機能です。

 

なお、オーディオインターフェイスで検索すると人気の高い「Focusrite」についてはコスパ・デザインとも魅力的ですが、現行機種でループバック機能がついているのは「Scarlet 4 i 4」以上のグレードで、現状ではDAW(音楽編集)ソフト上のみで動作、配信ソフトには対応していないようです。レコーディングまたはライブをメインにする方向けのインターフェイスだと思います。

SSL」と「TASCAM」はパソコンをつないでいなくても単体のマイクプリアンプとしてミキサーの拡張やDI、ファンタム電源としても使うことができます。 

 

続いては10万円台の上位クラスの機種です。

 

RME ( アールエムイー )  / Fireface UCX II  (2021年8月発売予定

 

RME ( アールエムイー ) / Babyface Pro FS

※筆者使用

 

UNIVERSAL AUDIO  / APOLLO TWIN X DUO (Thunderbolt3)

 

ANTELOPE AUDIO / Discrete 4 Synergy Core (Thunderbolt2 / USB2.0


もし安いオーディオインターフェイスを使っていて、アップグレードを検討するなら、思い切って高い機材にシフトした方がいいかもしれません。安い機材ほどサイクルが早く、2~3万の機材を数年でとりかえるより、高い機材で長くサポートしてもらう方が得策かもしれませんし、何よりグレードの違いを感じます。

 

RME」のFirefaceシリーズは業界標準のオーディオインターフェイスを販売するメーカーのひとつで、2009年発売のUC、2012年発売のUCXと高い人気を誇ってきたレジェンド機材。満を持して後継機となる「UCX Ⅱ」が発表(8月発売予定)となりました。また持ち運べるオーディオインターフェイスとして人気の高い「Babyface」は3代目となる「pro FS」が2020年にリリース(筆者愛用)。「持ち運び」といいつつ機能は全部入り。古いOSにも対応しつつドライバもアップデートし続けています。RMEは制作用だけでなく音楽鑑賞用としても使う人が多いとか。

 

 

MacとThunderbolt3の組み合わせなら「Universal Audio」を選ぶ人が圧倒的に多い印象があります。何と言ってもUADプラグインエフェクターモデリングのソフト)の数が尋常ではありません。最近はWindows対応の製品もリリースしてますが、WindowsでThunderbolt3を使うためにはまだまだ環境の整備や投資(端子が付いているPCの購入やIntel CPUの自作PCの制作等)が必要で、既存のUSBにつなぐなら、2020年にWindows専用としてリリースされた「APOLLO SOLO USB」が選択肢になるかもしれません。

 

あと最近注目されているのが「Antelope Audio(アンテロープ)」というメーカー。マイクで録音したときの音質やモデリング(ビンテージのマイクやプリアンプのサウンドを再現する技術)の評価がとても高く、RMEやUniversal Audioから乗り換えてくる人もいるとか。良さはおそらく三者三様なので、この3つのメーカーが今後リリースする製品にも注目です。

 

ミキサー 兼 オーディオインターフェイスという選択肢

 

視点を変えて、オーディオインターフェイス機能のついた「ミキサー」にする、という選択肢もあります。これなら「ライブ」「レコーディング」「配信」に必要な機能のかなりの部分をカバーすることができます。

 

YAMAHA ( ヤマハ ) / AG06 ウェブキャスティングミキサー


Soundcraft ( サウンドクラフト ) / Notepad-8FX アナログミキサー


TASCAM ( タスカム ) / Model12 レコーディングミキサー

※筆者使用

 

MACKIE ( マッキー ) / ProFX6v3

※筆者使用

 

特にYamahaの「AG06」はウェブキャスティングミキサーの名前の通り配信機能に特化しています。iPadiPhone(USBカメラアダプタ接続)でも配信可能。もちろんミキサー、オーディオインターフェイスとしての機能があります。Soundcraftの「Notepad-8FX」やTASCAMの「Model12」も、これにマイクとパソコンかiPhoneがあれば配信可能な環境を構築できるといわれています。さらに「Model12」の場合はマルチトラック録音(パソコンやSDカードに各楽器のトラックごとに音声データを別々に記録)できるので、かなり魅力的です。MACKIEのミキサーは現状ではiOSに直接つなぐことはできませんが、最新型のProFX v3シリーズはもともと上位クラスに搭載されていた「ONYXマイクプリアンプ」が入っており、先日このミキサーを使ってギター演奏の動画用の音声を録ったところ、かなりいい音で録音できました。

 

 

ただしこうしたミキサー型のオーディオインターフェイスも、テレワークや配信の世界的な需要の高まりで全体的に品薄の状態が続いています。うっかり転売品や付属ソフトが使えない中古品をつかんだりしないように注意して選ぶようにしてください。

 

※追記 

WindowsについてはIntel搭載の上位モデル「Evoプラットフォーム」にthunderbolt4(USB-type C接続)端子を装備した機種が各メーカーから発売されています。一方MacはOS11 Big Surへアップデート、CPUもintelに代えてApple自社開発の「M1チップ」搭載の機種に更新されています。オーディオインターフェイスによっては最新のPCのシステムにまだ対応していない場合がありますので、各メーカーのホームページなどをご確認ください。

ミキサーの「ループバック機能」については各機種によって方法は異なりますが可能です。もともと配信に特化したYAMAHAのAGシリーズには「LOOPBACK」という切替スイッチがついています。筆者がソロライブ用に購入したMACKIEのProFXシリーズはどちらかというとライブ寄りのモデルなので、USBのセッティングにはいくつかの手順が必要です。(こちらのリンクに設定方法が書いてあります)

Model12は非常に多機能なので使用方法を覚えるのが大変ですが、チャンネルごとに「Live(マイク/ラインに入る音)」「PC(PCからの音)」「MTR(本体で録音した音」に切り替えることができます。ループバックを使わないで配信する場合、ミキサーとパソコンの距離が離れている場合は、オーディオインターフェイスとしてではなく、本体で録音した上で、従来のミキサーと同じようにステレオ(L・R)で出力して別のオーディオインターフェイスにつないで配信する、という方法が意外とシンプルで有効かもしれません。配信についてはまた別の機会に記事を書きたいと思います。