音左右衛門のソラミミ

良き音に、ずっと浸っていたい

配信機材について、今からでも考えてみる

気が付けば8か月ぶりの記事となりました。(オーディオインターフェイスマイクについての記事は時々アップデートをしていますので、またご覧ください)この間一時的に演奏活動を再開できたりもしましたが、まだまだきびしい状況は当分続きそうです。

イベントをおこなうにしても準備期間が2週間~大規模なものなら半年前、1年前から準備が必要になるので、せっかく準備してきたのにまた土壇場で開催できなくなったり、開催できたとしても到底採算が合わないという不安やリスクが常にあります。「はい、解除されたのでどうぞ感染対策しながらライブやってくださいね」と言われて来週できるわけがありません。

 

そこで、多くのミュージシャンが2020年以降さまざまな方法で「ライブ配信」をおこなってきました。私もいくつかのソロライブを開催したり、有観客&同時配信のライブに呼んでいただいて演奏することができました。ライブの生配信や録画配信は感染対策であることはもちろん、さまざまな事情で会場に足を運べない方にも音楽をお届けできる、とても素晴らしいシステムだと思っています。

 

一方で、これは別のリスクを呼び込みます。例えば無料配信をして、投げ銭をいただく、という方法は当初は効果がありましたが、長期的に成立するモデルではありませんでした(過去形)。動画を無料で観られてしまうというのは、ユーザー(お客様)にとっては最高ですが、発信者にとっては諸刃の剣です。ファンが増えて、CDを買ってみようか、事態が収束したらライブに行きたい、あるいは共演したいと多くの方が思ってくださったらという夢はありますが…

さらにPCやスマホへの配信を視聴いただくということは、その端末で観ることができる膨大な動画コンテンツ(YouTubeだけでもこの状況にガチで取り組む超有名アーティストやユーチューバーの方々、私も利用している無料または定額の動画配信サービスなど)と同じ土俵に挑むことを意味します。

 

例えばこれまでのライブでは当たり前のようにいただいていたチケット代3,000円、いや半額の1,500円であっても、ライブ1回の視聴のために使っていただけるか…これはたとえ身内やファンであっても大変なことです。

 

これは単に値段の問題ではなく、そもそもライブの楽しみというのは、その場で1度かぎりの音楽をじかに楽しむだけでなく、そこに居合わせた人々の出会いや再会、ライブ前後の美味しい食事や景色、そこまでの移動(時には旅行)と…すべてセットであることを、みんな知っているからです。

 

どうしても経済的な話ばかりになってしまい申し訳ないのですが、これから配信をビジネスとして始めて収益をあげるというのは、ラーメン店を新しく開業して繫盛店にするのと同じくらい難しく、実力と運が試されるギャンブル性の高い事業かもしれません。

 

なので、配信をするなら、収支のことはとりあえず置いといて「まず自分が楽しんで、その姿を楽しんでもらおう」「遊びながらスキルアップ」「トラブルも織り込み済みで」くらいにとらえる方が、絶対にいいです。それに機材を一度揃えてしまえばランニングコストは通信費くらいなので、ギャンブルはギャンブルでも失敗したときの経済的損失は少ないです。演奏やトークの良し悪しでどう評価されるかは、ライブだろうと配信だろうと同じですし、あとは良い音質、良い画質で安定した配信を心がければOKです。

 

まずは「録画配信」から

…勢いあまってついサラっと書いてしまいましたが、その「安定した配信」が、ライブ配信では最も重要な部分だと思います…。「音声が聞こえない」「音がずれる」というトラブルはどんなに慣れた方でも一定確率で発生することなので、演奏に集中できない第一の原因となりえます。

 

まずは動画配信に慣れる意味でも、「収録した動画を公開する」ことをおすすめします。トークや演奏の動画を撮影して編集し、動画サイトやSNSに投稿するという、従来からある発信方法です。これまでにご紹介した機材や、ライブ用の機材にカメラとパソコン、そして十分な作業時間があればなんとかできるようになります。

 

生配信にトライする

これが「生配信」となると難易度が格段にあがります。Web広告で「USBマイク1本で気軽に生配信!」という記事をちらほら見ますが、トークの生配信ならまだしも、演奏しながらのワンオペでの生配信(セルフで演奏も配信作業もこなすこと)はかなり難しいです。知人のミュージシャンで何人かワンオペで生配信している人がいますが、本当にすごいことをしていると思います…。

さて、以前の記事で2回ほど「音楽のライブ配信」に必要なものについてリストを書きましたが、

 

超シンプルなシステムで組む場合

スマホ

 

それ以外の場合

・ビデオカメラ

HDMIキャプチャー

・スイッチャー(カメラの切り替え・HDMIキャプチャー内臓タイプあり)

・オーディオインターフェイス(スイッチャーがあればなくてもOK)

・パソコン (1~2台)

スマホなど(モニター用)

エンコーダー(ストリーミングソフトなど)

・照明(できれば)

HDMIケーブルなど各種ケーブル

・マイクやミキサーなど、編成や規模に応じて「ライブ用」「レコーディング用」の機材を適宜

・ネット環境(できれば光回線の有線LAN)

 

今見るとかなりざっくりなリストでしたが、この1年でとりあえず揃えてみました…。配信用に新しく購入したのはカメラ2台(ビデオカメラとミラーレスカメラ)・スイッチャーとHDMIキャプチャー、録音・配信に対応したミキサーです。今後の制作環境を強化するためにマイクとオーディオインターフェイスも新調しました。実はこの「音左右衛門のソラミミ」を書くことで、私自身がかなりマインドの整理をさせてもらっている気がします。

 

USBマイクだけで配信するなら

この1年、すごい勢いでリリースされている機材の1つがUSBマイクです。オーディオインターフェイスを介さずに直接パソコンやスマホにつないで高音質で配信できる本当に便利なアイテムです。私も1つ導入しています。

 

ポイントは

・使い勝手の良さ

・マイクの音質

・価格

・USBデバイスとして認識されるか、オーディオインターフェイス一体型か

 

の4点になります。自宅で卓上にマイクを置いてライブ&トーク番組のように放送するにはこれで十分かもしれません。オンラインレッスンにも最適です。

 

proaudiosales.hibino.co.jp

 

ドイツの有名な音響ブランド「AKG(アーカーゲー)」が出したLYRA(ライラ)はUSBマイクの市場を一気に広げた立役者かもしれません。指向性を4段階に切り替えることができます。<正面のみ(指向性)・正面ワイド・正面と背面(双指向性)・全方位(無指向性)> 

 

ただしUSBマイクには大きな弱点があります。多くのUSBマイクが、「ドライバ不要、つないですぐ使える」ことを売りにしていますが、このドライバがないことで、どうしてもレイテンシー(遅延)が発生しやすくなります。例えばパソコン上で音を鳴らしながらそれに合わせて演奏する、あるいはYAMAHAのSYNCROOMにつないでリアルタイムでセッションするのには向いていません。

 

そこへきて、最近はオーディオインターフェイス一体型のUSBマイクもリリースされるようになってきました。

 

www.mi7.co.jp

 

少し高くなりますが、すぐにでも試してみたいのがPreSonusの「Revelator」というマイク。USBマイクでありつつオーディオインターフェイスとしての機能(PCの音に合わせて演奏できるループバック機能含む)を備えており、音の遅れ解消と安定性を得るのに重要なASIOドライバ(Windows)に対応しています。

 

カメラを選ぶ

次に、映像配信に欠かせないのがカメラ。これはもう考え方の問題で、「音を優先するか」「映像を優先するか」の2択で選ぶしかありません。「映像を優先」さらに「音も映像もしっかり」となると、かなりの投資が必要になります。

 

画質については現在販売されているカメラはほぼ全てHD(1080pまたは720p)以上の画質なので、ポイントとなるのは、

 

(配信の場合)
HDMIスルー出力機能があること
(録画の場合)
・動画の連続撮影時間
(配信・録画共通)
・カメラのセンサーの大きさ
・バッテリーが大きい または 外部給電ができること

の4点になります。

 

HDMIスルーというのは、カメラに写っている映像(スタンバイ画面または録画画面)をそのままHDMIケーブルで出力できる機能です。重要なのはカメラの液晶モニタによく映る表示(感度や時間、オートフォーカスの四角など)を完全に消した状態で出力できること。2014年以降発売のカメラで、ある程度以上のクラスのカメラなら、だいたい条件を満たすと思います。

 

zoomcorp.com

 

「短時間の収録」または「配信専用」と割り切るなら、かなり選択肢があると思います。ちなみに一番安価なのはZoomの「Q2n-4K」という機種で、もともとハンディレコーダーなので高音質保証、HDMIスルー出力、USBでの給電にも対応しています。

 

 

 

また高画質のアクションカメラとして定番の「Go pro」シリーズはどちらかというとMacユーザー向けという印象でしたが、最近はWindowsへの接続にも対応してきています。1カメのみでしたらWebカメラとして接続できますが、HDMI端子から出力するには別売のメディアモジュラーが必要となります。

- - - 

 

さて、ここからは高価格路線になります。ミラーレスカメラで録画する場合は、動画の連続撮影時間を確認する必要があります。ライブをまるごと撮影するなら、少なくとも1時間以上連続撮影できる機種が欲しいところ。これまでミラーレスカメラのほとんどは輸出時の関税の問題で(30分以上はビデオカメラのカテゴリーになるため)29分59秒までしか撮影できませんでしたが、多くの動画クリエイターがビデオカメラよりもミラーレスカメラを使用するようになったことから、上位機種では動画の時間制限もなくなりつつあります。かねてから言われていた、熱で停止してしまうという問題も、技術の向上で解消されてきました。

 

筆者が調査した範囲で、2021年5月現在 「120分以上の連続撮影ができるカメラ」は

 

◇ビデオカメラ(SONY / Panasonic / Victor )

現行モデルはほぼ全てOK

(センサーサイズは1/5.8型~1型)

 

◇コンパクトカメラ

SONY(1型センサー)

ZV-1

RX100m7

 

◇ミラーレスカメ

SONYAPS-Cサイズ)

α6100

α6400

α6600

SONY(フルサイズ)

α7C

α7R Ⅳ

α7S Ⅲ

FX3

α1

 

Panasonicマイクロフォーサーズ

G99

GH5

GH5 Ⅱ(2021年6月発売)

GH5s

Panasonic(フルサイズ)

S5

S1

S1R

S1H

 (それぞれ上がお手頃→下に進むにしたがって最新または高級機になります)

 

panasonic.jp

 

Fujifilm(中判センサー)

GFX100s 

 

◇参考 センサーサイズの比較

1/2.5型=5.7mm×4.3mm

1型=13.2mm×8.8mm

マイクロフォーサーズ=17.3mm×13.0mm

APS-C=23.6mm×15.8mm

フルサイズ=36mm×24mm

中判=43.8mm×32.9mm

 

定点カメラで長回し、2カメ、3カメ以上使うのであれば、ビデオカメラがコストや操作性の面で断然優位になるでしょう。

 

ただし「○○倍ズーム」をうたっているビデオカメラはセンサーサイズが小さく、暗くなりがちで室内ではとても不利です。配信でビデオカメラを使うと高感度撮影モードでノイズがのったりして「うーん」となったりします。

 

ビデオカメラは「子どもが生まれてから~運動会や発表会を撮影するカメラ」のイメージがあまりに定着してしまい、そのニーズはほぼスマホに取って代わられてしまいました。業務用こそ定期的にリリースされていますが家庭用ではここ2年ほど新製品がないという状況みたいです…。

 

筆者は基本的に「餅は餅屋」の考え方なので、動画はなるべく「ビデオカメラ」で撮影したいところですが、やはり明るさがネックになるため、もともと写真用に買ったミラーレスカメラ(APS-C)を動画用に(30分以内で区切りながら)使っています。画質は素晴らしいので重宝しています。ただ本来の使い方でないかも…とどこか頭の片隅にあるのも事実です。

 

それでもミラーレスカメラは現在は動画制作の主流になっているので、もし映像コンテンツを増やすなら思い切って投資するのも十分ありです。現状ではSONYPanasonicが動画機としての地位を二分しており、それぞれのユーザーがたくさん動画をアップしていますので、「(メーカー 機種名) 配信」で検索してみてください。

 

大きいセンサーになるほど光を多く取り込み、表現の幅が広がるのでプロユース向け、そして「フルサイズ」という言葉の魔力にぐらつくこともあります。ただし、ズームをしようとするとどうしてもレンズが巨大になり重くなります。この市場にはプロのカメラマンや投資を惜しまないハイアマチュアの方があふれていますので、とにかく本体もレンズも価格が高いです。長く情報を集めていると金銭感覚が壊れてきますので注意してください。

 

ちなみにコンパクトカメラやミラーレスカメラでの連続撮影時間はあくまでカタログ値なので、撮影環境や設定により、バッテリーの交換または外部給電が必要になる場合があります。

 

外部給電する場合、全体的にはSONYの方がしやすそうな印象です。USBでの給電機種(ACまたはモバイルバッテリー対応)が多いのと、Panasonicのアダプターがやや入手困難な状況と思われるからです。ただPanasonicも2019年にリリースされたフルサイズの「Sシリーズ」以降、多くのカメラでUSBでの給電が可能になり、2021年リリース予定のマイクロフォーサーズの「GHシリーズ」の後継機(GH5 Ⅱ)でもUSB給電ができるようです。※GH6は詳細未定

 

機種を選ぶ

◇ビデオカメラ
ビデオカメラだけでシステムを構築するなら、メインカメラをセンサーサイズの大きいSONY AX100かAX700、2カメ以降をズームが効くAX45や4万円以下の廉価品や旧モデルで固めるのが堅実かもしれません。何よりもAC給電で長回し、ほったらかしても大丈夫という代えがたい安心感があります、後から高いカメラを買っても活用できます。

 

◇コンパクトカメラ
2021年5月時点で「最初の1台」を選ぶなら、コスパ重視、配信・動画撮影・WebカメラとオールラウンダーなSONYの「ZV-1」かもしれません。RX100シリーズで培った技術を動画に特化させて、オートフォーカスが早く、動画も無制限、USBで給電もできて(発熱のみ注意)、何より小さいので扱いやすそうです。音楽仲間も導入していて、というか自分も欲しくなってきました…。ちなみに手持ち撮影するなら、グリップとバッテリーが+1個ついたセットがむしろお得です。

 

 

◇ミラーレスカメ
長時間連続撮影ができるミラーレスカメラでもっとも求めやすいのはパナソニックのG99、あと生産完了品ですが動画クリエイターから圧倒的な支持を受けたGH4やG8はしばらく市場に残っているので今がラストチャンスでしょう。ソニーならα6000番台で最新のα6100・α6400α6600です。

もし予算が許せば、PanasonicのGH5シリーズかS1シリーズ、SONYならα7シリーズの中でも高感度で暗所に強い最新のα7S Ⅲ、αシリーズをベースに動画専用に開発されたFX3でしょう。ちなみにGH5s、α7SⅢ、FX3は動画向けのため画素数をあえて少なくしています。

最初に書いたように連続撮影にこだわらない、HDMIスルーができればOK、というのであれば選択肢は限りなく広がります。ただカメラは電源を入れているだけで本体が熱くなるので、HDMIスルーでも熱くなることが考えられます。実際に家族のミラーレスにHDMIをつないだところ、何もしなくても本体が熱くなってしまい30分程度で自動停止してしまいました(ファームウェアの問題かもしれませんが…)。長時間撮影ができるカメラ=放熱がしっかりしていてつけっぱなしでも熱停止しにくい、という一種の保証のようなものかもしれません。

 

ちなみに筆者は5年前に買ったFujifilmの「X-pro2」を使用しています。もともと写真に特化しているので動画の長時間撮影もHDMIスルー出力もできませんが、とても気に入っているカメラなのでWebカメラ、収録、ライブのスチール写真と使える範囲でフル活用しています。というかFujifilmユーザーの筆者としては120分連続撮影が可能な「GFX100s」にはかなりぐらついている、というより本命でもあります…。スペックで考えれば驚異的なコスパといわれていますが、レンズや周辺機器合わせて100万コースです。

 

fujifilm-x.com

 

※2021.8.20追記
ソニーから新しいVlogカメラ「ZV-E10」が発表になりました。ミラーレスカメラのα6000シリーズをベースに作られていて、映像に特化したモデルでありながら機能を絞ったためミラーレスの中で最も安価になっています。正直かなり揺れています。動画の連続撮影時間は80分だそうですが、途中休憩のあるライブ配信なら十分使用可能。ただレンズ交換式なので、この安さはもっと性能の良いEマウントレンズやαシリーズのカメラが欲しくなるための(いわゆる「沼」に誘うための)ソニーの戦略でしょうか…

 

外部レコーダーに送る

ちょっと業務用機材の領域に入りますが、カメラからHDMI出力したデータを外部レコーダーに送るという方法もあります。30分以内しか録画できないカメラの動画機能を拡張したり、バックアップできるというもの。Blackmagic DesignとATOMOSというメーカーがそれぞれHDモデルや4K対応モデルを出しています。いずれもHDMIスルーできるのでスイッチャーやパソコンの間に挟めばOK。ただし録画されたデータは「ProRes」という形式で、主要な動画編集ソフトでの編集を前提としており、これを買うなら動画編集ソフトもちゃんとしたものを…となります。値段もカメラ並みに高いですが、連続撮影できるなら、そうでもないかもと思ってしまうのがなんとも…

 

ビデオスイッチャーとHDMIキャプチャー

ビデオスイッチャーはその名の通り、複数台のビデオを切り替える機器です。個人で扱うならHDMI4入力までの機器が良いと思います。例えばカメラ2~3台+スマホタブレットをつないで静止画などを挿入することができます。本格的なライブ配信をするなら必須の機材となります。少しでも長い時間の動画を生配信する場合、1つの定点カメラではなく、複数のアングルがあるって、けっこう重要なことです。

 

ここで注意が必要なのは、スイッチャーには、「そのままパソコンに接続できるスイッチャー」と、それだけではパソコンとはつながらず「HDMIキャプチャーが別途必要なスイッチャー」の2種類があるということです。ややこしいのは同じメーカーが両方のタイプを微妙な型番の違いで扱っていて、USB端子があると思ったらそれは「リモートコントロール用」「ソフトのアップデート用」だった…ということもあります。けっこう高額な買い物になるので慎重に選んでください。

 

USBでPCにつながるスイッチャー

 

ATEM mini pro

www.soundhouse.co.jp

 

2020年、どれだけの表現者がこの「ATEM miniシリーズ」に助けられたことでしょう。3万円台から手に入るビデオスイッチャーとして、メーカーであるBlackmagic Designの動画配信の市場での存在感が一気に高まりました。

 

特長はなんといってもそのシンプルさ。レバーのついたスイッチャーの操作にはある程度の熟練が必要と思われていますが、Atem miniシリーズは1カメ~4カメをボタンひとつで切り替えられます。あくまで「mini」なので各種ボタンがとても小さいですが慣れれば大丈夫です。PC上でもソフトを入れて業務用スイッチャーのようにコントロール可能です。

 

ATEM mini シリーズは2021年春の時点で

・ATEM mini

・ATEM mini pro

・ATEM mini pro ISO

・ATEM mini Extreme

・ATEM mini Extreme ISO

 

の5種類があります。主な機能の違いは

 

・ATEM mini
HDMI4入力と1出力、USB Type-C(2.0)接続

☆ATEM mini pro
パソコンに負荷をかけず単独で配信が可能・MIXした映像を記録・USBType-C(3.1)接続 

・ATEM mini pro ISO
5系統(4入力それぞれ+MIXした映像)を記録

・ATEM mini Extreme
HDMI8入力と2出力 USBType-C(3.1)×2 (記録はMIX映像のみ)

 ☆ATEM mini Extreme ISO
9系統(8入力それぞれ+MIXした映像)を記録

 

※映像の記録にはUSB Type-Cに別売のポータブルSSDを接続

 

上位機種になるにつれ、使える機能が増えていきます。☆印の機能と価格のバランスがとれた「pro」、とにかく使えるチャンネル数を増やしたい方には「Extreme ISO」がおすすめです。なお映像をポータブルSSDに記録する際にはUSB-TypeC端子がふさがってしまうので「pro」「pro ISO」の場合はHDMIキャプチャーを別に用意する必要があります。 

HDMIキャプチャーが別途必要なスイッチャー

 

Black magic designの前に、「ビデオスイッチャーは50万円以上する業務用機材」のイメージをくつがえしたRoland。さすがどの分野にも先陣を切る姿勢がすごいと思います。思えばUSBで接続するオーディオインターフェイスやポケットサイズのリニアPCMレコーダーも、ローランドが先駆けでした。

 

2015年に登場したキャプチャーV-1HDをアップデートさせた「V-1HD+」(2020年発売)はHDMI4入力と2出力、さらにオーディオ入力も充実しているモデルです。質感も良く、プロ仕様の機材をコンパクトにまとめただけあって、使いこなしてみたい衝動に駆られる逸品です。

 

ただ、このキャプチャーに入力した映像をパソコン経由で配信するにはHDMI出力を1系統使って、そこに別途HDMIキャプチャーを使う必要があります。Rolandの他のビデオスイッチャーにはUSBで直接パソコンに取り込めるタイプ(VR-1HDVR-4HD)もありますが、若干レートが低くなります。ちなみにフラッグシップモデルのVR-50HD MK IIまで行くと完全に業務用なので、ミュージシャンが個人で所有するのはなかなか大変です、というか金銭感覚がマヒしてきます。

 

ちなみにHDMIキャプチャーについて、現在出回っている多くのキャプチャーは「オンラインゲーム実況配信」をするユーザー向けの「ソフトウェアエンコーダー」のキャプチャーで、快適に動作させるためにはそれなりのPCスペックが求められます。

RolandからV-1HD+と同時期に発売されたHDMIキャプチャー「UVC-01」はハードウエアエンコーダ―で、パソコンに負荷をかけず安定動作しやすいとされています。ただし基本的に遅延は起こりやすいので、音声と映像をあらかじめスイッチャーにまとめて調整することで「ずれ」を防ぐか、TASCAMの「Model12」のように0~2000ms(2秒)まで音を遅らせて出力できるミキサーを使うといいと思います。

 

なお、配信用のソフトウェア(OBSなど)でも仮想スイッチャーをたてて使うことができるので、USBポートがたくさんあるデスクトップパソコンに、例えばHDMIキャプチャー接続のビデオカメラやWebカメラを複数台つないでしまうことも可能です。音ずれの調整もOBS上でできますが、もしワンオペで行うなら、個人的には物理的に切り替えられるスイッチャーやミキサーがあると便利だと考えています。

 

※なお筆者はスイッチャーについては「ATEM mini pro」、記録するのにUSB-C端子がふさがる可能性を想定してHDMIキャプチャーの「UVC-01」を導入しています。ちなみにこの記事の時点では「録画配信」をメインにしており「生配信」の本格的な運用には至っておらずシミュレーション段階なので、とりあえずソラミミとして聞き流してください。また後日報告します。

 

f:id:hambeigourmet:20200820154243j:plain

このサイトでは「アクセストレード」との提携により「サウンドハウス」のバナーを掲載しています。


www.soundhouse.co.jp